第六期を迎えて

第六期を迎えて

当社は、2020年10月から第六期目を迎えました。これもひとえに、お客様をはじめ、当社を支えてくださるパートナーの皆様やお取引先様のおかげであると思っております。

言うまでもなく、2020年は歴史に深く刻まれる年になるだろうと思います。好むと好まざるとにかかわらず、私たちの生活様式に大小さまざまな影響を与えたことは疑いがありません。

それでは、特に私たちの「働き方」について、新型コロナウイルスはどのようなことをもたらしたと言えるでしょうか?

次の3点に集約されると思います。

1.個人の優先ニーズの変化

これまで、働き方において組織に求めるものといえば、何よりも「待遇」、「快適な職場環境(人間関係含む)」、「安定性」、「共感できる理念や目標」などが挙げられてきたと思います。

それが、たった数ヵ月の間に、健康面における「安心」と「安全」に一気に切り替わったように感じております。

実際、オフィスなどの物理的な職場空間に対する意識は経営側も個人側も一変し、オフィス縮小や撤退、地方移住などがトレンドになりました。これが一時的なものに留まるかどうかはわかりませんが、感染状況にかかわらず、今後もテレワークを継続化する企業も出て来ていることからすると、これを機に働き方を柔軟化させようとする動きはしばらく続くと思われます。

物理的な制約が取り払われるならば、働く場所に対するニーズと、安心・安全に対するニーズが大きく満たされることになるため、組織がこのニーズにどのように対処するかは重要なポイントになります。

もちろん、感染状況を踏まえて、テレワークを一切止める企業があるのも事実です。テレワークの実施については氷山の一角にすぎず、デジタル化推進も含めて、変わろうとする姿勢があるのか、ないのか、無言のメッセージの意味こそが最も重要でしょう。

2.組織と働く個人における関係性の変化

感染拡大以降、組織が発信するメッセージについて、明示的なものか、無言のものかを問わず、組織内ではかなり敏感にやり取りがなされました。

危機的な状況の中で、組織が何を考え、どのような価値観を持ち、どう行動するのか、そのスタンスが白日の下にさらされたように思います。

その中では、業績に対する前向きな影響があった企業であれ、そうでなかった企業であれ、その一挙手一投足が働く人に大きな影響を持っていたことは疑いがありません。

いわゆる「エッセンシャル・ワーカー」と呼ばれる人たちや、業務上どうしても出社の必要がある、感染リスクがある中でも仕事をする人たちに対して、組織側が何かしらの態度で「報いる」ことをしたかどうかは、組織としての器の大きさが問われることになったと思います。

テレワークをはじめ、働き方の柔軟化や効率化をめぐっては、前述の個人ニーズを満たす動きを取ったかどうかが大きな意味を持ちました。

いずれにしても、組織に対する個人が抱く関係性のイメージ(あたたかいか、冷たいか、厳しいか、思いやりがあるか、何を大切に思っているか、など)や距離感について、あらゆる組織で変化が起きたことは間違いありません。

組織は、その器の軽重を問われたのであり、働く側は無言の回答を出し続けていくことになります。ある人は変化に乗じて大きく動き、ある人は組織に対して絶望し、またある人は自分を守る方向へとシフトしたかもしれません。これが持つ意味については、いまだ多くは水面下であり、ある程度の時間が経って、抵抗や突然の離職などのさまざまな形で噴き出すことになるだろうと思います。

不測の事態が起きて手遅れになる前に、組織は自らが発してきたメッセージと行動について振り返り、それを個人がどのように解釈したかを確認する必要があります。

3.都市部と地方の組織レベル格差の拡大

感染拡大は主に人が集まる都市部で起きたため、組織の所在地によって感染に対する意識や温度感が大きく異なっていました。

地方では感染者が非常に少ないために「我関せず」の組織が多かったのも事実です。一方で、都市部ではこれを機にデジタル化や業務効率化を図る組織も多く現れました。

意識の濃淡は、そのまま組織としてのレベルの濃淡をもたらし、特に地方において、多くの組織が進化する最大のチャンスを見逃してしまった可能性について、思わざるをえません。

進化を一気に加速させた組織と、中途半端に終わった組織、そして、何も行わずに取り残された組織。

このことは、長期的な視野で考えるとまた大きな意味を持ってくるものと思われます。

耐え忍ぶのではなく適応する

新型コロナウイルスがもたらしたものについて、抽象度の高い表現で振り返りを行いましたが、私たち組織側が考えるべきことは、常に「日々進化」だと思います。

あることをしなかった消極的決定が、組織にとって思わぬ結果をもたらした事実は、歴史的にも枚挙にいとまがありません。もちろん、その逆もあります。

しかし、創造的な挑戦をして行動した事実こそが組織に前向きな影響を与えるのであり、目の前を通り過ぎる波や旅立つ船をただ眺める行為は、組織を前進させることはないように思います。仮に積極的な行動によって失敗があったとしても、それは組織に生産的な学習をもたらすきっかけになり、また新たな一歩を踏み出せることになります。

したがって、私たちはこの未曾有の事態に対して単に耐え忍ぶのではなく、ひとつの環境変化と捉えてある程度の適応的な行動を示さなければなりません。樹木が、新しい環境でも着実に、少しずつ根を伸ばして環境と調和していくうように、地味ながらも行動を起こしていく。ただ、その繰り返し。

このことを肝に銘じて、荒波が待ち受けるこれからの一年間を乗り切ってまいりたいと思い直した所存です。